主権者教育は「投票所での立ち居振る舞いを学ぶ選挙教育」だけなのか?
7月の参院選以後、「18歳選挙権」関係の報道もすっかりと少なくなってしまいました。
もちろん、教員向けや選管職員向けの研修などは行われており、私も時々講師に招かれて話させていただくこともあります。
そうした中で、「そもそも主権者教育って何?」ということがあります。
・選挙教育/有権者教育:投票方法(といっても、候補者の政策の見比べ方というよりも、投票所での立ち居振る舞いなど)、選挙の種類、投票率についてなどの、いわゆる知識系
・政治教育:中学校では公民科、高校では政治経済/現代社会で学ぶ「政治」に関する知識系
・主権者教育:以下参照
などなど、いろいろな表現がされたりします。
これらの違いって何なのか。
選挙管理委員会や明るい選挙推進協会が「主権者教育」と使うと【選挙教育/有権者教育】がメインになります。
教育委員会が「主権者教育」と使うと、【政治教育】あるいは【選挙教育/有権者教育】でしょうか。
ちなみに文部科学省は「主権者教育」について、以下のように説明しています。
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主権者教育の目的を、単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるのみならず、主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を発達段階に応じて、身に付けさせるものと設定。
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つまり、「主権者教育」には、【政治教育】【選挙教育/有権者教育】の要素だけではなく、<主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を発達段階に応じて、身に付けさせる>要素が含まれる、ということになります。
しかし実際は、どうしても「投票率を挙げる」「若者の政治意識を高める」ということばかりに目がいっていて、しかし、実際、学校現場でそのような教育がきちんとされているように思えないですし、選挙管理委員会や明るい選挙推進協会においては、そうした視点を踏まえて取り組んでいるところは少ないと思います。
あるいは「シティズンシップ教育」という言い方もされることがありますが、こちらはイギリスなどでの取り組みから入ってきた考え方で、【市民としての資質・能力を育成するための教育】と言われたりもします。
まぁ、「市民って誰?」ということもありますが。。。
何が言いたいのかというと、「主権者教育」に取り組むにあたっては、「政治」や「選挙」は大事ではあるのですが、それだけではなく、主体的に物事を考え、発達段階に応じて社会を担う力を身に付けていくことも大事、ということです。
もちろん、教育の場において、これまで「政治的中立性」を意識するがゆえに、「生の政治」を扱うことを避けてきたことは事実です。
ただ、前述したように、実際の「政治教育」の現場においては、知識系ばかりで、しかも今回の18歳選挙権においては「投票所での立ち居振る舞いを学ぶ」ための模擬選挙ばかりが目立ち、「生の政治」を扱うことはほとんどなかったと感じています。
主体的に物事を考え、発達段階に応じて社会を担う力を身に付けていくためには、「生の政治」について考えることは不可欠であり、取り扱うことなしに、主権者を育てることはできないなぁ、と思います。
とともに、主体的に物事を考えることにおいては、「生の政治」だけ扱うことが絶対条件ではありません。
データを読み解いたり、スピーチや演技、絵画などを通じて表現方法を学んだり、身近な生活について意見交換したり、ということも実は大事になったりします。
そもそも、自分が考えていること、感じていること、思っていることを、安心して表明したり、伝えたりする環境が無いことに問題があると思います。
主権者教育の推進に取り組んでいる方には、そうしたことをもっと強調して取り組んでもらいたいなぁと思うこの頃です。
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